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しぼたん企画

テレビ業界の片隅でひっそり働く現役放送作家が更新するブログです。

オリンピックで本が読めない…中で出会った一冊。「いなくなった私へ」を読んで。

いやーオリンピックで本が読めない上に寝不足です。

日本凄いですね!金メダルの数もかなりのもんじゃないですか?これからも量産しそうですね。個人的には錦織!メダル獲って欲しいなあ。

さあオリンピック観戦が忙しく中々本が読めなかったんですが、つい先日書店でこの本に出会いました。

いなくなった私へ (『このミス』大賞シリーズ)

非常に美しい表紙です。

「辻堂ゆめ」という作家さんの事は全く知りませんでしたが、Google先生に聞いてみると…

1992年生まれ。若い! 

新進気鋭の作家さんの様です。

さて僕は本を書く前に帯をじっくり読みます。(当たり前か笑)帯に書いてある事が魅力的だと購買意欲がグーンと高まります。

べた褒めの「帯」が期待感を煽りまくり。

帯を見てみると魅力的なワードがたくさん書いてありました。

第13回「このミステリーがすごい!」大賞・優秀賞作品

 出ました!「このミス」で優秀賞を受賞した作品の様です。これは信頼出来ますね。絶対面白いはずです。

それにしても1992年生まれの若さで「このミス」を受賞するとは辻堂ゆめ恐るべし。これからどんどん有名になっていく作家さんなんでしょうね。

タイトルも装丁も内容も、すべてにおいて、「これは売りたい」と思える作品に出逢うことができました。

 こんな文章も書いてありました。紀伊国屋書店の店員さんが寄せたものの様ですが、本のプロがお墨付きをしている作品なんですから良い作品なはずです。

「これは売りたいと思える作品」だなんて良いこといますね。作家冥利に尽きる褒め言葉だと思います。これは辻堂ゆめさんも嬉しかっただろうなあ。

設定の斬新さだけでA評価。すべての疑問にきっちり(超自然設定の本格ミステリー的に)理屈がつくところがすばらしい

 こう評価したのは翻訳家で書評家の大森望さん。書評家といえば読書のプロですからこれまた信頼感のある帯文です。

しかしちょっと気になる部分が…。「超自然設定の本格ミステリー」とはなんぞ?僕の感覚だと「超自然設定」と「ミステリー」は対極にあるんじゃないかな、と思ってしまいます。まあそこは読んでからのお楽しみ!と言うことなんでしょう笑

主人公の死をめぐる謎の構成はしっかりしているし、枚数を費やしてしっかり書き切った筆力にもただならぬものがある

 こう書いたのはコラムニストの香山二三郎さん。確かに僕も「分厚い文庫本だなあ」と。20代という若い作家さんがここまでの枚数を費やして1つの物語を書き上げてしまうなんて、帯文にもあるようにすごい筆力です。脱帽です。

さあそんなこんなで「いなくなった私へ」を購入。オリンピック観戦で眠たい目をこすりながら僕は頑張って読みました。つまんなかった読めてないと思います。分厚いし。でも面白かったので割と早く読めてしまいました!

どんな小説?

人気シンガソングライターの上条梨乃は、渋谷のゴミ捨て場で目を覚ました。
そこに至るまでの記憶はない。
通行人に見られて慌てるが、誰も彼女の正体に気づく様子はなく、さらに街頭に流れるニュース
――梨乃の自殺を報じたニュース――に、梨乃は呆然とした。
自殺したなんて考えられない。本当に死んだのか? それなら、ここにいる自分は何者なのか? 
そんな中、大学生の優斗だけが梨乃の正体に気づいて声をかけてきた。
梨乃は優斗と行動を共にするようになり、やがてもう一人、梨乃を梨乃だと認識できる少年・樹に出会う……。
自殺の意思などなかった梨乃が、死に至った経緯。
そして生きている梨乃の顔を見ても、わずかな者を除いて、誰も彼女だと気づかないという奇妙な現象を、梨乃と優斗、樹の三人が追う。

出典:https://www.amazon.co.jp/いなくなった私へ-『このミス』大賞シリーズ-辻堂-ゆめ/dp/4800237297

驚きました!

設定が大胆すぎるでしょ笑

主人公はどうやら亡くなってしまっている様なんですが、生きている…という設定。ここからどうやってミステリー感を出していくんでしょうか。僕は読み始める前にそう思いました。でも読んでみると、なるほどこれはミステリー感ある作品だと感じることができました。

さあ、これから「いなくなった私へ」の面白いポイントを列挙していきます。

主人公はなぜ生きているのか?

あらすじを読んでも分かるように主人公である上条梨乃は、世間的には自殺した事になっています。しかし本人は生きている。存在している。ただ世間には上条梨乃だとは認識されないという摩訶不思議な状況です。

これってめちゃくちゃ怖いですよね。生きているんだけど本人だとは認識されない。爽やかな装丁、読みやすい文章とは裏腹にぞくっとする設定になっています。

なぜ主人公は生きているのでしょうか?そしてなぜ周りに本人だと認識されないのか?これがこの本最大のミステリーです。

唯一主人公を認識できる登場人物の存在。

世間的には自殺した事になっていて、本人が目の前に現れてもかつての上条梨乃だとは認識されない主人公。そんな彼女にも救いの存在が居ます。

それがあらすじにも登場する、優斗と樹です。彼らはなぜか「主人公がかつての上条梨乃だと認識できる唯一の人間」で、主人公とともに謎を解明しようとします。

特に樹は主人公と全く同じ状況で、世間的には事故で亡くなった少年と言う事になっていて、彼の家族でさえも、本人を目の前にしてもかつての彼だと認識する事が出来ません。

梨乃、優斗、樹が協力してこの不可解な現象を究明していく…「いなくなった私へ」の主軸となるストーリーであり、ミステリーな要素です。

上条梨乃は本当に自殺だったのか?

ここは読んでからのお楽しみなので、読み飛ばしてもらってもかまいませんが、物語が進むと「上条梨乃は本当に自殺だったのか?」という謎が浮かび上がります。

ミステリー的には自殺じゃないですよね笑。この物語には真犯人が居ます。

正直「たぶんこいつだな」っていうのはすぐ分かるんですが、動機が意外というか今っぽい。動機に関しては、これこそ読んでからのお楽しみにしておきましょう。

おわりに…

なかなかボリューミーな小説でしたが、実際読み始めてみると、斬新な設定と読みやすい文章でサクサク読む事が出来ました。見た目より早く読めてしまう小説では無いでしょうか。

クライマックスも実に爽やかで、ドロドロ感のない素敵なミステリー小説に仕上がっていたと思います。

作家・辻堂ゆめさんはきっと幸せな人生を送ってきた方なのではないでしょうか笑。ひねくれ曲がった人生じゃあ、こんな爽やかで読後感の良いミステリーは書けないはず…そう思ってしまうほどの読後感。

きっとミステリーが苦手…という方も楽しく読む事が出来るでしょう。

コアなミステリーファンには受け入れがたい点もあるんでしょうけど、これが次世代のミステリーという事で良しとしましょうよ!笑

そんな感じで終わりにしておいて、僕はオリンピック観戦に戻ります。

 

いなくなった私へ (『このミス』大賞シリーズ)

いなくなった私へ (『このミス』大賞シリーズ)