【読書感想文】「重松清」集中読書!「きみの友だち」は友情物語の最高傑作だった!
「重松清」集中読書の記念すべき一冊目。
どんな小説?
頭がよくてちょっと意地悪な恵美ちゃんと、何をやってもぐずな由香ちゃんは、ある事故が起きてから誰とも付き合わなくなった。勉強もスポーツも抜群でライバル同士だったブンちゃんとモトくんは、あることがきっかけで全然チグハグになった。それでも……衝突や痛みや喪失を乗りこえて輝く「友だちという関係」を描く最高傑作。(新潮社HPより)
この小説はたくさんの「友達関係」を様々な登場人物を通して描いた作品です。「きみの友だち」を読む上で「誰に一番共感するか?」が結構大事。この小説は「連作長編」で「10話」に分けられており、それぞれの話で中心となる主人公が変わります。さらに、1話で登場した主人公が年齢と立場を変え、他の話にも深く関わってきます。(構成上はちょっと複雑でしょうか)
読み終わっていざ読書感想文に向かう時、全ての章を全部書こうとすると大変です。なので全て読んだ上で…
自分が共感したお気に入り主人公を選んでみましょう。
僕の場合は「ブンちゃん」です。
お気に入りの主人公を中心に感想文を書く。
きみの友達の様に主人公は話によって変わる様な作品では、「お気に入りの主人公」=「推しメン」を決めてから書き始めると、自分の主張が一貫するので書きやすいと思います。僕の場合は、ブンちゃんです。だから今回はブンちゃんを中心に感想を書いていきたいと思います。
ブンちゃんは「理想」の男子。
この物語で一番重要な立ち位置として描かれているのは、ブンちゃんのお姉さんである「恵美ちゃん」です。彼女の弟であるブンちゃんはまさに「マンガの主人公」の様な人物として描かれています。勉強もスポーツも出来て、女の子にもモテる。まさに「理想」の男子です。
正直僕は全く共感できませんでした。こんな男子は友達に恵まれて悩みなんか無いだろって感じで。でもそんな男の子でも苦悩してしまうのが友達関係。重松清も「あらゆる友達の形」を描くために、悩みとは無縁のようなブンちゃんを登場させたんだと思います。
親友モトの存在がブンちゃんを大人に。
ブンちゃんの物語を語る上で欠かせないのが、モトくんの存在。彼はブンちゃんが小学5年生の頃の転校生。彼も出来るヤツで、ブンちゃんのプライドはズタズタです。どうしても仲良くする事が出来ず、遂には殴り合いに発展してしまうのですが、これがきっかけで友達になる事が出来ました。
その中で特に印象深いシーンが、2人が初めて直接ぶつかり合う場面。
その日ブンちゃんはクラスで野球の練習をしていました。彼はエースで4番でキャプテン。しかしモトくんはブンちゃん以上の能力を持っていました。ブンちゃんはモトくんにエースの座を譲ろうとします。自分から譲る事でプライドを守ろうとしたのです。
「今度から、中西がエースだから。で、オレ、ショート守るわ、うん、バッティングに専念して、オレ四番で、中西三番、最強じゃん、完璧じゃん……」
ブンちゃんの精一杯の強がりがこのセリフに現れています。しかしモトくんはこう切り返します。
「オレ、ピッチャー、しない」(中略)
「だってさ……悪いもん、和泉に」
この瞬間ブンちゃんのプライドは崩れさり、モトくんに殴りかかるのです。
小学5年生の頃、僕も自分を守るのに必死でした。ブンちゃんの様に凄い奴ではありませんでしたが、ブンちゃんの気持ちは痛いほど分かります。
重松清は「ブンちゃん」で何を伝えたかったのか。
ブンちゃんにまつわる物語。重松清は何を伝えたかったのでしょうか。
僕はブンちゃんとモトくんが出会わない場合を考えてみました。
きっとブンちゃんはずっとお山の大将で、オトナになるのはもっと成長してからだったでしょう。ブンちゃんはモトくんと出会って、一度自分が壊れました。この経験がブンちゃんをオトナにしたのだと思います。
全部読み終わった後、結局一番良い人生送れそうだなって思う人物はブンちゃん、そしてモトくん。彼らが出会う事で、つまり良い友人に恵まれる事で、人生は180度変わる。そんな事を重松清はブンちゃんにまつわる物語で伝えたかったのではないでしょうか。
おわりに
ブンちゃんは1人では成長できなかったはずです。
モトくん、恵美ちゃん、その他の友達に恵まれたおかげで人生が何倍にも良いものとなりました。友達の大切さをストレートに描いた結果がブンちゃんでした。
僕自身友達の多い方ではありません。しかしブンちゃんとモトくんの様に、相手の人生に好影響を与えられる友人でありたいと思いました。